労務ガイド 11

労働紛争解決法について

2021年 12月 2日   更新

労働紛争解決法 (Settlement of Labour Dispute Law, 2012) はストライキ及びロックアウトがもたらず経済的影響を最小限に抑え、公正かつ迅速なプロセスで訴訟の代替的手段を提供することを目的としています。労働紛争は以下、個別紛争と団体紛争の2つに分けられます。

1. 個別紛争

  • 個別紛争には従業員の解雇などが該当し、雇用主または従業員がタウンシップ調停機関に不服申し立てが可能。
  • タウンシップ調停機関は3営業日以内に中立的な第三者の介入を通じて当事者の合意に達するよう支援。
  • 調停者はあくまで支援の立場にあり、和解に向けた強制力はない。

2. 団体紛争

労働条件や賃金の支払いなどが該当。雇用主、従業員、労働組織が下記の流れで申し立てることができる。

[労働紛争解決法に基づく団体紛争解決の流れ]

  • 1) 職場調整委員会(第1訴訟)
  • 2) タウンシップ調停機関(第2訴訟)
  • 3) 州/地域紛争解決仲裁機関(第3訴訟)
  • 4) 紛争解決仲裁評議会(最終訴訟)

1) 職場調整委員会

  • 従業員30名以上の企業は職場調整委員会を形成する必要がある。
  • 4名の委員会メンバー (雇用主と従業員の代表2名ずつ) からなり、従業員の代表者は従業員によって指名。
  • 委員会メンバーの任期は1年
  • 従業員30名未満の企業も職場調整委員会の設立が可能。委員会を設置しない場合は、雇用主と従業員で直接交渉。
  • 委員会は苦情の申し立てを受領後、5営業日以内に交渉及び解決をしなければならない。
  • 和解の記録は、関連するタウンシップ調停機関に送付。

2) タウンシップ調停機関

  • 1) 職場調整委員会で解決しない場合、2) タウンシップ調停機関に申し立てることが可能。
  • 調停に達しない場合、2) タウンシップ調停機関は2営業日以内に3) 州/地域紛争解決仲裁機関に通知。

3) 州/地域紛争解決仲裁機関

  • 独立し、かつ中立の第3者として、7営業日以内に法的拘束力のある決定を下す。
  • 当事者が決定に服従しない場合、ストライキ/ロックアウトを実行するか、もしくは最終決定を4) 紛争解決仲裁評議会に求めることが可能。

4) 紛争解決仲裁評議会

  • 法廷にて、通常7営業日以内(特例時は14日間)に決定を下す。

【参考】

Luther. (2017) Memo: Myanmar Employment Law.

<COVID-19/クーデターの影響を受けて>

労働安全衛生法に準じている場合でも、リモートワークの場合の労働安全衛生は網羅できません。ミャンマーでは最初のロックダウンが行われた昨年4月以降から現在まで約1年半リモートワークが続いている場合、衛生的な労働環境の確保は個人に委ねがちとなっています。次第にリモートワークやパンデミックという状況に慣れ始め、感染した家族の看病をしている場合でも、現地スタッフのアルコール消毒や手洗いうがいの習慣が薄れているケースもみられます。労働安全衛生についてはこれまでにミャンマーで整備されてきた制度に加えて、社会情勢に応じた各社主体的な取り組みが求められています。